うちの前には畑がありました。うちのうしろの竹やぶに覆われた小さな山には、怖くて入ることができませんでした。
友だち大勢とにぎやかに過ごすよりは、お父さんとお母さんの畑を手伝ったり、一人で遊んだり、あとは、庭に生えていた草とおもちゃのやかんで、四つ上のお姉ちゃんとお茶淹れごっこをして遊んでいました。
ピアノとか塾とか、お姉ちゃんがしていた習い事は、同じようにやりました。お姉ちゃんが褒められているのを見て、自分から「行く」って言ったら喜んでくれるかな、と。「やりなさい」って言われたことは、たぶん一度もありません。その一つに版画があったのは、お父さんもお母さんも版画家だったからです。